自動車関連事業推進センター

ポリプロピレン複合材料の高機能化6.難燃UL94-5VA材料

  日本ポリプロ(株)ではかねてより、高いレベルの難燃性能付与技術の開発に着手しており、今般、従来に無い極めて高い難燃性能を有したPP複合材料の開発に成功した。

  本開発材料には、独自に開発した新ポリマーを活用することにより、燃焼溶融時に極めて高い形状保持能力が付与されており、この新ポリマーと独自の難燃技術を組み合わせることにより、より高度な難燃化を実現し、UL94難燃規格の中でも最高水準の難燃性能規格である「UL94-5VA」の認証を取得した(図12)。EV、HEVなどの電気自動車が普及するにつれて、充電装置の差込口などでの適用が進むのではないかと期待している。

  また本難燃PPは、日本鉄道車輛工業会、鉄道車輛用材料の燃焼性規格において、『難燃性』の規格認証も正式に取得しており、鉄道車輛用材料分野においても認知された材料であるため、鉄道車輛難燃部材への適用にも期待がかかる。加えて、IHヒータなどの強電製品、比較的大型の据置型家電製品類のエンクロージャーなど、電気製品に関連する幅広い分野での応用も期待されている。

  更に本難燃PPは、フィラーの種類を選択する事により広範な性能レンジをカバーする事が可能である。例えばGFを選択した場合、高温雰囲気下でも極めて高い剛性及び強度を保持する事ができるので、自動車のエンジン部品に使われる訳ではないが、エンジンルーム内の部材やモータなど、熱源により高温となる部材にも使用可能となる。

  本難燃PP(GF30%含有)とABSのUL94-5VA材料(GF20%含有)とを性能比較したレーダーチャートを図13に示した。本難燃PPは機械物性のバランスがよく、製品の軽量化も可能であることが分かる。難燃性能は試験片の厚さに依存して変わるが、製品軽量化の観点からは、より薄い試験片で高い難燃性を発現する材料が好ましい。本難燃PPは、比較対象とした難燃ABSよりも薄い試験片でUL94-5VA認定性能を実現する厚み品での比較において、他の難燃樹脂材料よりも比強度が大きくなる(図14)。すなわち高比強度による肉薄化が可能となり、その軽量化の効果は大型製品になるほど明確になりものと考えられる。

  加えて今回開発した超難燃PPは、ハロゲンフリーであり、環境及び人体への影響が極めて少ない、クリーン材料である。従来のハロゲン系難燃材料は、火災時に臭化水素や塩化水素などの有毒ガスが発生するため、煙による被害で多数の尊い人命が失われていたが、本難燃PPは高度な難燃性能のみならず、人体に有害なガスの発生も極めて少なく、環境及び人体に十分配慮された環境配慮型素材であるといえる。

  今後、難燃性、軽量性、クリーン性といった特徴を活かし、新たな分野での適用を目指し、市場導入を図ると共に、更なる機能向上も検討していきたいと考えている。

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参考文献
1)平成21年度地域活性化推進調査報告「自動車の電子化に係る欧州産学官連携と地域産業振興調査」報告書,経済産業省 中国経済産業局
2)Production Statistics, International Organization of Motor Vehicle Manufacturers (http://www.oica.net/)
3)金子玄:高分子,vol.53,p796(2004)
4)畑田浩一:成形加工,21(3),p.146(2009)

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