自動車関連事業推進センター

コンセプトカー「MOMA」とハイサイクルCFRP成形工法4.ハイサイクルCFRP成形工法の開発と展開

  自動車用途のCFRPの成形材料・加工法は、熱硬化性樹脂系CFRPと熱可塑性樹脂系CFRP(CFRTP)の性能・品質と量産・賦形性に関して図5のように位置づけられる。
  従来、最も一般的な成形加工法は、前述の通りAC工法で、低圧下で長時間かけて硬化させるので抜群な強度が得られる。しかし、成形時間が長く、設備も大掛かりになるので、高付加価値CFRP製品には最適であるが、量産には不向きである。
  近年、ハイサイクルCFRP成形工法が注目されて、特に欧州ではRTM(Resin Transfer Molding)工法が確固たる地位を築いている。
  一方、三菱レイヨン(株)は、中量生産(~3,000台/月)に対応できる「PCM(Prepreg Compression Molding)工法」を開発した。これは、熱硬化系ハイサイクル樹脂(2~5分硬化)を炭素繊維に予備含浸させたプレス成形用速硬化プリプレグとともに、高圧プレス成形技術(プレス圧:30~100kg/cm2)を基盤としたハイサイクルCFRP成形工法である。
  これらのハイサイクルCFRP成形工法を図6に示し、その特徴の比較を表2に示す。
  PCM工法、特に、プレス成形用速硬化プリプレグは、成形したCFRPの物性がAC工法で成形したものと同じ性能を示す。したがって、RTM工法に比べて、試作時は安価な型を使用するAC工法で試行錯誤を行い、量産時に高価な金型を使用するPCM工法に切り替えることができる利点がある。
  PCM工法は、パターンカット、ラミネート、プリフォーム賦形を含むプリフォーム工程と高出力油圧プレス機を用いて高圧高温で成形するプレス成形工程の2工程に大別できる。プリフォーム工程は生産性の観点からプレス成形工程のサイクル時間と合わせる必要がある(図7)。
  PCM工法は適用する部材・部品に応じて速硬化プリプレグだけでなく、CF-SMCとハイブリッド(複合)化して使用することもできるハイサイクルCFRP成形工法の一つである(図8)。
外板への適用に向けたPCM工法の例としては、剛性用途に適した炭素繊維一方向プリプレグ(UD)と、高圧プレス成形技術を組み合せることにより、例えばアルミ製トランクリッドと同等性能を有しつつ40%軽量化したCFRP製トランクリッドの量産技術の目途を得た。この技術は、次の特長を持つ(図9)。

  1. (1)高級車外板に求められる「クラスA」外観を達成
  2. (2)成形品のボイドレスを達成(工程安定性と再現性)
  3. (3)塗装時のCFRP部材に起因するピンホールを解消
  4. (4)高Tg化による金属外板とほぼ同等の塗装性を達成

  さらに、構造部材への適用に向けた成形工法として、硬化時間を短縮した速硬化プリプレグとCF-SMCを同時成形するハイブリッド成形工法や、複雑形状の中空部品を成形するPコア成形工法を開発した。ハイブリッド成形工法は、次の特長を持つ。

  1. (1)成形品のボイドレスを達成(工程安定性と再現性)
  2. (2)プリプレグとSMCとの同時成形により、接着剤を上回る接着性
  3. (3)複雑形状に対応(リブ、ボス、金属インサートなど:図10)

  また、従来は熟練オペレーターが長時間の手作業で3次元複雑形状(特に、深絞り複雑形状)のプリフォームを行っていたが、(株)チャレンヂは、テンションをかけながらプリプレグを型面に貼付けてプレス賦形するハイサイクル・プリファーム技術の開発に成功した。例えば、1/2サイズシートバック(図11)はこのハイサイクル・プリフォーム技術により、60分以上必要であった作業時間を10分以内に短縮し、機械化による量産化への目途も得た。
CFRP部品を本格的に採用する動きが世界的に加速しており、PCM工法はRTM工法と並ぶ熱硬化性樹脂を用いた中規模量産成形工法として認知度が高まってきている。


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