CFRPのPCM工法【Automotive Materials 第29号特集1】
自動車関連事業推進センター
コンセプトカー「MOMA」とハイサイクルCFRP成形工法1.はじめに
炭素繊維複合材料(Carbon Fiber Reinforced Plastics:以下、CFRP)は、従来、モータースポーツ車両、一部の超高級車や高級車の限定的な部材に適用されているのが実状であり、本格的な実用化の域には達していない。
近年、自動車の温室効果ガス排出規制(燃費目標)が特に欧州で強化され、2015年までに新型車の平均排出量を120g/km以下(19.3km/?以上)を達成する必要があり、未達成であれば課徴金が科される。さらに、この規制は、2020年までに95g/km以下、2025年までに70g/km以下と厳しくなっていく。
燃費改善技術は、エンジン効率向上や駆動系改良、ボディ軽量化や空気抵抗削減、タイヤのころがり抵抗低減などに分類できる。一方、衝突安全性確保などによりボディ軽量化に反し、ボディサイズが拡大し、車体重量が横ばいから増加で推移してきた。
このような状況下で、わが国の鉄鋼メーカーは世界一の薄型・軽量化技術を有する高張力鋼板で、また、アルミや樹脂などを製造する素材メーカーは各社の素材で対処すべく自動車メーカーへの軽量化提案を強めている。特に精力的に進められている素材開発の一つが、高強度・高弾性を確保し、最軽量化を可能とするCFRPを使用した外板・構造部材である。
欧州のBMW社は、数年前から軽量化のために、CFRPを高級量販車である「M6」や「M3クーペ」のルーフなどに使用している。さらに、同社は、大都市圏内使用を前提としたゼロ・エミッションの車両、「i3」を2013年秋に市場導入した。この「i3」は、同社として初の量産型電気自動車となり、電気自動車の航続距離を延ばすうえで車両重量は非常に重要な意味を持っている。「i3」では、軽量かつ非常に高強度の炭素繊維が多用され、自動車産業の将来に向けた展望を抜本的に変えるポテンシャルを秘めている
三菱レイヨン(株)は、自動車業界へのCFRP事業の強化と拡大に向けて、多様な顧客要求に応じることの出来る技術対応力と独創的開発力を併せ持つ(株)チャレンヂをパートナーに迎えた。これにより、両社の協力体制を更に強固なものとし、設計開発から量産化の流れを加速することで、CFRP事業の川中・川下展開において大きな一歩を踏み出した。
本稿では、(株)チャレンヂがCFRPを大量に採用して開発したコンセプトカー「MOMA」と、三菱レイヨン(株)が開発したハイサイクルCFRP成形工法(PCM工法)への取り組み状況について概説する。
6.今後の取組み
三菱レイヨン(株)は豊橋にある複合材料開発センターで各種開発を進めてきたが、今回CFRP成形事業で40余の歴史を有し、多様な顧客要求に応じることのできる技術対応力と独創的開発力を併せ持つ(株)チャレンヂをパートナーに迎えたことで、炭素繊維複合材料の川中・川下展開において大きな一歩を踏み出すことになった。
(株)チャレンヂ社は実績のあるAC工法に加え、2013年末に世界初の取り組みとなるPCM工法での自動車部品の生産をスタートさせ、徐々にPCM部品を増やしたい。
三菱レイヨン(株)は受注動向によって(株)チャレンヂの生産能力を超える場合や低価格品は海外も含めて量産工場の建設も視野に入れながら、ティア1、ティア2のパートナー企業に材料供給と成形工法をパッケージで支援するビジネスを行っていきたい。
両社は、今後、(株)チャレンヂを三菱レイヨン(株)のCFRP部品の開発・生産拠点とし、自動車用途向けCFRP部品の受注拡大を積極的に進めていきたい。
さらに、現在開発中の技術としては量産車対応のために熱可塑性樹脂系CFRP(CFRTP)の材料とその加工法(図5)の確立を目指している。
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