自動車関連事業推進センター

植物由来原料イソソルバイドを用いた透明バイオエンプラDURABIO™4.DURABIO™の材料特性

  DURABIO™(デュラビオ™)は、特殊な複素環式(非芳香族)骨格のイソソルバイドを主原料とするため、PCやアクリル樹脂(以下PMMA)等の非晶性樹脂には見られない種々の特徴を有している(図3)。コモノマーによる共重合化により、弾性率や衝撃強度および耐熱性、表面特性、光学特性などの調整が可能である(表1)。また、生分解性樹脂ではなく耐久性に優れており、アクリル樹脂並みの耐候性など多様な用途展開の可能性が考えられる。

4.1光学特性

  DURABIO™は、分子内に芳香族骨格を有さないため、PCに比べてより広い波長領域で高い光線透過率を示し、PMMAに近い屈折率を有している。アッベ数も高く、色収差は小さい樹脂である。また、その分子構造から分極率異方性が少ないため、配向複屈折や光弾性係数が小さいという特徴も併せ持っている(図4)。このため、PCでは適応が困難であった光学フィルム用途等への展開が期待される。

4.2耐光性・耐候性

  分子内に芳香族骨格を持たないDURABIO™は、光による黄変が少なく、耐光性を必要とする用途へも幅広く展開可能である。耐光性が優れていることにより、透明用途のみならず、淡い色合いを必要とする材料用途でも黄変の懸念が少なく幅広い展開が期待される。更に、独自の耐候処方により、降雨を伴う耐候試験においても、黄変や表面白化が無く高い透明性を維持できる(図5)。

4.3表面硬度・耐傷付き性

  DURABIO™は、表面硬度が高いという特性も有している。PCの鉛筆硬度が、3B程度であるのに対し、DURABIO™はFからHB程度である。またDURABIO™は、耐ティッシュ傷付き性がPCやPMMAと比較して優れている(図6)。DURABIO™は、耐傷付き性の重要な因子である表面滑り性も良好であるため、PC/ABS塗装品と比較しても、テーバー摩耗試験での良好な耐傷付き性の結果が得られている(図7)。

4.4衝撃特性

  DURABIO™は、高速ハイレート試験(面衝撃試験)での面衝撃強度にも優れている。PMMAでは脆性破壊するのに対し、DURABIO™は延性破壊を示し、PCに匹敵する衝撃特性を示す(表2)。

4.5耐薬品性

  DURABIO™は、PCに比べてメチルイソブチルケトンに加え、芳香族系有機溶剤であるトルエンに対する耐薬品性が優れている。また、日焼け止めクリームに対する耐薬品性にも優れている(表3)。さらに、アミン系化合物に対する耐性においても優れている。(図8)。

4.6意匠性

  DURABIO™は、ピアノブラック等の透明着色において深い漆黒調の色合いを示す。一方、メタリック調等の着色の場合も、高い透明性と低い屈折率により奥行きのある色合いを示し、意匠性を活かした用途展開も期待出来る。また、PCと比較して成形加工温度が低いため、耐熱性の低い染顔料の使用が可能であるのみならず、白色等の淡色着色の場合にも、優れた耐光性により鮮映性を失い難い(図9)。更に、塗装せずに高外観が得られるため、金型鏡面性を損なうことなく塗装による表面性低下の懸念もない。

4.7成形性

  DURABIO™は、射出成形・押出成形などの従来の成形法で成形加工が可能である。射出成形の場合は、シリンダー設定温度:220~260℃、金型温度:40~80℃で成形が可能であり、既存成形機、金型温調機を継続使用できる(表4)。また、PCの場合、シリンダーの温度設定が280℃程度であるのに対して、DURABIO™は50℃以上低い230℃程度で同等の流動性が得られるため、成形性は良好である(図10)。
  成形可能な成形品サイズは、一般的な射出成形では、1点コールドゲートにて3mm厚A4サイズの成形実績がある。射出プレス成形を活用すれば、1点ホットランナーにて3.5mm厚×600mm×800mmの大型成形品、1点コールドゲートにて1.0mm厚×10インチ角サイズ薄肉成形品の成形実績がある。また、射出成形時のシルバーストリークやゲート部分の転写不良については、射出率、計量条件、ゲート肉厚の最適化、ガスベントの有効配置により安定生産が可能である。
 一方、押出成形では、0.5mm~15mm厚のシート成形及び25μm~300μm厚のフィルム成形の実績があり、作製したシートは真空成形、プレス成形の2次加工も可能である。

4.8DURABIO™の高耐衝撃化

  DURABIO™はノッチ依存性が高い樹脂であるため、ノッチRの拡大により、部材の耐衝撃性は大幅に改善される。他樹脂用に設計された金型の場合、製品形状の変更は困難で、材料側での改良が求められる。DURABIO™はゴムの添加、またはゴム含有樹脂とのアロイ化により高耐衝撃化が可能であり、これらの材料についても採用例が増している(表5)。DA6610Rは既存グレード同様、耐光性が良好である。またDT6010Rは、発色性が良好で漆黒性に優れ、意匠性が好評である。アロイ材はスズキ(株)の新型『アルト ラパン』の内装樹脂カラーパネルに採用されている(図11)。


DURABIO™(デュラビオ) 製品詳細[別窓表示]


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