1.はじめに

   シートモールディングコンパウンド(SMC)は、現在自動車産業で使用されている熱硬化性複合材としては最も多く活用されている材料である。一般的なSMCは、ガラス強化短繊維複合材で、各種添加剤や触媒が配合された熱硬化性マトリックス樹脂が使用され、樹脂には主に不飽和ポリエステル樹脂が用いられている。また、SMCは短い成形サイクル時間で成形品が得られ、優れた熱適合性、適切なクラッシュマネジメントや良好な疲労特性を提供するCFを提供するとともに、軽量化を実現できる。

  MCC社は、剛性向上と軽量化に寄与するCFをベースにした自動車構造部材・部品量産用の中間基材として、CF短繊維を使用し、高い成形性と軽量、かつ高強度が得られるビニルエステル樹脂系CF-SMC「STR120N131」上市、供給している。

2.SMC製造プロセス

   図11は一般的なSMC製造ラインを示す。SMCは連続したシートとして製造される。

   製造開始前に、マトリックス樹脂、増粘剤、硬化剤及びすべての添加剤が予め混合された樹脂ペーストが2つのドクターボックスに供給される。次に、ドクターボックスの直下を一定速度で移動するキャリアフィルム上に樹脂ペーストが一定量に制御されて塗布される。連続繊維が回転カッターでチョップされた短繊維(繊維長は一般に1センチ)は、塗布された下面キャリアフィルム上にランダムに堆積させる。繊維量はカッター及びキャリアフィルムの速度によって制御される。その後、樹脂ペーストが塗布された上面のキャリアフィルムが、樹脂側を下にしてチョップド繊維の上に被せられる。この時、チョップド繊維は上下の樹脂ペーストに挟まれたサンドウィッチ状態にあり、一連の加圧ローラーに送られて、内在する空気がシートから押し出されるとともに、繊維に樹脂ペーストが含浸されて、SMC成形可能なシートとなる。

  その後上記SMCシートは温度制御された熟成室に特定の時間保存され、「増粘処理」を施される(取り扱い易くするため比較的低粘度の樹脂を化学的に所望の成形粘度にする)。また、製品シートは通常ツヅラ折り、もしくはロール巻きの梱包状態で提供され、保管温度は20℃以下が推奨されている。

1.CF-SMC製品

    CF-SMCは、上記のとおり標準弾性率のCFを1インチ長にカットしたチョップド繊維に熱硬化性樹脂ペーストを含浸させたシート状成形材料である。 
    MCCのCF-SMCは以下の特徴を持つ。

  1. 自動車・産業用途に開発されたCF-SMC
  2. 複雑形状の部材・部品も成形可能な優れた流動性
  3. 軽量、かつ高い弾性率を有する
  4. 靱性が高いビニルエステル樹脂をマトリックス樹脂とし、高強度

4.CF-SMCプレス成形プロセス

  成形プロセスを図12に示す。一般的にはプリフォームが不要で、材料を型内で流動させて成形を行う。但し、成形物の形状などにより、プリフォームが必要な場合もある。また、CF-SMCプレス成形は以下のような特徴を持っている。

  1. ハイサイクル成形
    • 2分硬化
    • Net Shape成形
  2. 汎用油圧プレス成形機が使用可能
    • 成形圧力 3~10MPa
    • 金型温度 130~150℃
  3. 低コスト
    • プリフォーム不要
    • 複雑形状を賦形可能
    • 部品統合によるコスト低減
    • 成形時の廃棄材料が極めて少ない
    • 成形後のトリミング不要
    • 金属インサート可能

5.採用実績

トヨタ自動車社

  • トヨタ自動車社
    • プリウスPHVバックドアインナー
      新型プリウスプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」のバックドアの骨格に採用された。量産モデルでのCFRP採用は初である。大幅な軽量化と、高い部材性能を実現する点や、複雑な部材が生産できる成形性、量産車の部材製造に必要な生産性が評価された。
    • レクサス LC500 ドアインナー等
      レクサス(LEXUS)の新型ラグジュアリークーペ「LC500」「LC500h」のドアインナー及びラゲッジインナーに採用された。複雑な形状の部材を生産可能する成形性に優れる点を高く評価された。
  • 日産自動車株式会社
    • GT-R ディフューザー

6.今後の展望

  MCCのCF-SMCは、次の3つの課題に向かって高性能化を図っていく。

  1. 高性能化(高物性、均一性向上)により構造部材への適用拡大
  2. 鋳造アルミニウム部材(複雑形状、厚肉部材)への適用
  3. 連続繊維基材ベースのSMCとのハイブリッド成形

    <おこわり>

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