自動車関連事業推進センター

1.はじめに

  今日の環境問題への関心の高まりに伴い、車両燃費向上に繋がる軽量化の他、生産性、省エネルギー、リサイクル性といった環境に対する負荷低減に直結する性能を有する熱可塑性エラストマー(TPE: Thermoplastic Elastomer)は、自動車、家電、医療、食品、電線および日用品等あらゆる分野での使用が拡大している。とりわけ自動車分野においては、EV(Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)の車種拡大にも見られるように、環境問題への強い危機感があり、TPEは、主に車両軽量化による燃費向上やCO2、NOxガス低減、高リサイクル性による環境サステナビリティの観点から、加硫ゴム、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)代替材料としての普及が顕著である。

  TPE[対象樹脂:オレフィン系(TPO)、スチレン系(TPS)、ポリエステル系(TPEE)、塩化ビニル系(TPVC)、塩素化ポリエチレン系、クロロスルフォン化ポリエチレン系、ポリウレタン系(TPU)、ポリアミド系、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴムの計11品目]の2011年の国内需要量は、国産品、輸出品を含めおおよそ332,550トンに及び、2012年には342,700トンと、前年と比較し3%の需要量の伸びを見せた1)。2013年以降も、環境保持を重視する社会潮流を背景に更なる国内外需要の成長が確認されており、今後とも高い成長率で推移するとみられている。品目別では、TPOとTPSの主要2材料で国内需要のおおよそ6割が占められ、また分野別では、主に自動車用途の成長が著しい。なお、当初、自動車用途におけるTPE化の牽引役であったTPVCは、環境負荷への強い疑念から、一時脱PVC化が積極的に叫ばれて需要が後退したが、昨今、性能とコストバランス、グローバル供給性等の観点からその優位性が見直されている。

5.今後の展望

  21世紀において、地球規模での環境問題への対応は避けて通れない問題である。とりわけ自動車分野で使用される部材における軽量化、リサイクル、脱ハロゲン化といった要求はますます強くなり、加硫ゴムやPVCからTPEへの代替の動きは、今後も促進されるものと思われる。また、我々の身の廻りの商品の機能が日々向上していく中で、素材に対しても、さらなる高性能化、高機能化が求められる時代になってきている。

  三菱化学(株)のTPEは、幅広い商品群をラインナップしており、安定した品質の維持・管理と絶え間ない品質改良により市場ニーズに対応し、カスタマーの高い信頼を得てきた。今後も、より一層の高性能化と高機能化を目指し、カスタマーニーズはもとより、社会ニーズ、環境ニーズに応えた商品として成長させていきたい。


参考文献
1)「工業材料」(日刊工業新聞社)2013年10月号に掲載 (http://cmcre.com/archives/3332/)

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