水処理ソリューションに貢献する中空糸膜 ステラポアー™
優れたろ過機能で多種多様な用途で活躍
中空糸膜「ステラポアー™」は極細ストロー状の素材で、壁面に開けた無数の微細な穴に液体や空気を通すことでろ過し、微粒子や細菌を除去します。0.1μm(0.0001ミリメートル)以上の物質を通さないろ過能力で、家庭用浄水器から浄水・下排水処理システムや分離・精製・濃縮といった工業用途まで幅広く活用されています。
「ステラポアー™」には、PE(ポリエチレン)膜とPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜の2種類があります。初めに開発したPE膜は溶剤や可塑剤などを含まないためクリーンで不純物の溶出性が低く、浄水器や医療用途、電子材料用途の純水用フィルターなどに使われています。その後、市場のニーズに応えるため排水処理用途のPVDF膜を開発。酸化に強く、長寿命、高性能という特長から、下水処理や工場の排水設備などを中心に採用実績を伸ばしています。さらに、PE膜並みの環境性能を実現したPVDF膜へと進化させ、2013年から浄水設備への導入も増えています。
中空糸膜をすだれ状に編みシート状に加工した後、積層あるいは筒状に束ねることで平膜に比べ数倍の膜面積となり、優れたろ過機能でありながら設備をコンパクトにできます。また、膜の状態を目視で確認できるので点検が容易で、膜の交換周期が長くライフサイクルコストも削減できるなど、さまざまなメリットがあります。
- ステラポアー™の膜ろ過の仕組み
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浄水プロセスの比較
新たな市場、新たな分野へも挑戦
「ステラポアー™」を採用した水処理システムは、生活排水や産業排水の処理などに幅広く利用されており、国内外で5,000 件以上の実績を誇ります。特に微生物処理と膜分離を組み合わせた排水処理技術である膜分離活性汚泥法(Membrane Bioreactor=MBR)は、従来の技術に比べ、沈殿槽を不要とするなど設備の省スペース化が図れ、かつ良質な処理水が得られ再利用が可能なことから世界的に注目を集めています。高シェアを握るアジア市場でさらに実績を積み上げ、グローバルに販売網を拡大させることでトップの座を狙っていきます。
国内においては、パートナーである水ing(すいんぐ)エンジニアリング(株)[別窓表示]と共に、浄水場への浸漬式PVDF 膜ろ過装置の導入を進めています。従来プロセスの凝集・沈殿・砂ろ過の工程を、中空糸膜をコアとした技術で実施でき、安定した処理水質、省スペースに加え、維持管理が容易になることを強みに、大都市圏をカバーする大型案件でも提案活動をスタートしています。
今後は、「ステラポアー™」を活用した社会課題解決への貢献にも力を入れていきたいと考えています。排水処理した水を外に出さずに再利用する提案や、中空糸膜を用いた「ガス分離」で排ガスからCO2 を回収するなど、環境負荷低減に貢献する取り組みも進めています。
「ガス分離」で社会課題解決に貢献
インクジェットプリンターや血液検査をする生化学分析装置などでは、液体中の泡の発生による不具合を防ぐため、あらかじめ溶存ガスを抜きます。その際にガスだけを通す膜として三層複合中空糸膜「MHF™」が利用されています。この機能を活かし、混合ガスから特定のガスだけを抜き出す中空糸膜の開発を検討しています。カーボンリサイクルに向け、CO2を回収して貯留する二酸化炭素回収・利用・貯蔵(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)という技術が注目されており、そうした環境分野においても、中空糸膜を利用した「ガス分離膜」は非常に有効な手段になると考えています。
- 脱気の仕組み
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