自動車関連事業推進センター

自動車燃料系部品へのポリエチレン系材料の展開3.高機能材料の新規開発

  JPEでは、長年にわたるPFT材料開発の知見や実績を活かして、車両軽量化といった顧客ニーズに応えることができるポリエチレンの材料開発を進めており、以下に紹介する。

3.1 燃料タンクシェル用材料の開発(HDPE)

  ノバテック™ HB212R(以下HB212R)は、タンクの薄肉軽量化を実現し、部品の軽量化という顧客ニーズに応えるべく開発されたグレードであり、国内では2015年発売のトヨタ自動車(株)4代目プリウスに採用されている(図12)。薄肉軽量化に対するタンクシェルへの要求性能はシェル剛性の確保であるが、そのためには、材料の剛性(密度)を上げることが必要となる。しかしながらポリエチレンは密度を上げると耐久性が低下する傾向にあることから、高性能なPhillipsプロセス系触媒の開発および材料設計と製造技術の最適化により、高剛性、耐久性と耐久性および成形性を兼ね備えたHB212Rを開発した。表3にHB212RとHB111Rの物性比較を示す。
分子構造としては、HB111Rに対して、分子量分布を広げ、高分子量側で耐久性と高耐衝撃性を確保し、低分子量側で流動性を改良して、分子量分布の最適化を行った(図13)。また成形性に関してもHB111Rと同等レベルを維持している(図14)。HB212Rの採用により、タンクシェル本体重量で5~6%の軽量化を実現できており、自動車の軽量化の流れから今後も採用が進んでいくものと考えられる。

3.2射出溶着部品用材料の開発(HDPE)

  燃料タンク用の射出成形溶着部品用の材料には、タンクシェルと同等の高い性能が要求される。通常の射出成形用HDPEは、流動性には優れるが、耐久性、耐衝撃性が不足するため、燃料タンク用の溶着部品には推奨できない。ブロー成形用のタンクシェル本体材料(HB111R等)で射出成形される例もあるが、粘度が高く成形が難しいという問題がある。ノバテック™ HD HJ221(以下HD HJ221)は、高い耐久性、耐衝撃性と流動性をバランスさせた燃料タンク溶着部品用として開発した専用グレードである。HJ221の基本物性を表4に、流動性を図15に示す。HJ221は溶着部品向けとして、日本をはじめとして欧米でも幅広い車種に採用されており、世界的に高いシェアを有するグレードに成長している。

3.3大型部品用射出成形グレードの開発(HDPE)

  現在、顧客ニーズに応えるため、大型の射出成形部品用に流動性の良いハイフローグレードの開発を進めている。製品としては、①射出貼りあわせタンク(尿素水・汎用エンジン)②燃料タンク内蔵化部品などを想定している。高い流動性を確保した上で、耐久性・耐衝撃性をバランスさせるべく最適な材料設計を行い、新グレードとしてノバテック™ HJ333を鋭意開発中である(表5および図16)。

3.4 2色成形溶着部品用材料の開発

  (接着性ポリエチレン樹脂)
  EVOH系多層PFTに溶着しているインレットパイプやバルブからの燃料透過を防止するために、ポリアミド等のバリア性樹脂と、ポリエチレン系接着性樹脂の2色成形(図17)による溶着部品が使用されているが、アドテックス™ DH1203(以下DH1203)は、最適な配合設計技術により、低燃料透過性、高耐久性および良好な接着性を併せ持った接着性樹脂グレードである。表6にDH1203の物性と燃料透過性能を、従来材料(FT61AR3)と比較して示す。燃料透過量を従来の1/2程度に抑えることが可能であり、併せて高い耐久性を実現している。


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