自動車関連事業推進センター

自動車燃料系部品へのポリエチレン系材料の展開2.燃料系部品の樹脂化

  燃料系システム部品の樹脂化の状況を図2に示す。タンクシェルおよび周辺部品で広くHDPEが使用されてきており、それぞれの部品に関して以下に解説する。

2.1 タンクシェル用材料

  PFTの一般的な成形工法は、ブロー成形法である(図3)。ブロー成形法では、パリソンと呼ばれる円筒状の溶融樹脂を押出して、金型を閉じた後、パリソン中に空気を吹き込むことで賦形される。
  タンクシェル本体の層構成は、図4に示すような4種6層の多層構成となっている。PFTの多くが成形性・物性に優れたHDPEをベース材料にして、北米をはじめ世界的に強化されている厳しい燃料透過規制に適合するために、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の燃料のバリア樹脂層を積層した層構成となっている。また、バリア樹脂層とHDPE層の接着のために、バリア樹脂層の両側にバインダーとしての接着性樹脂層が設けられており、工程内リサイクルとしての再生層を含めた4種6層の多層構成となっている。
  HDPEと接着性樹脂の性能は、多層PFTの機能性確保において重要なポイントであり、JPEでは、ベース材料としてのHDPE、および機能材料の接着性樹脂の両方を提供している。
  表1にPFT用材料に要求される性能を示す。燃料タンクは重要保安部品のためタンクシェル主材のHDPEには、高い耐衝撃性・長期耐久性が必要とされ、併せて燃料系部品であることから耐燃料性が求められる。図5-1にタンクシェル用のHDPE材料・ノバテック™ HD HB111R(以下HB111R)の耐燃料性を示す。アルコール含有燃料を含め、長期における耐燃料性に優れていることがわかる。更に、成形時にパリソン自重による垂れ下がりを防止するために耐ドローダウン性が求められる。HB111RはPhillipsプロセス製造品であり、HDPEの製造法において主流であるZieglerプロセス品と異なり、長鎖分岐を有する特徴がある。この長鎖分岐の存在により、樹脂の絡み合いが発生して高い溶融張力を発現し(図5-2)、耐ドローダウン性が良好となる(図5-3)。Phillipsプロセスでは、ブロー成形性に優れた材料の設計が可能となり、技術競争力の高いHDPEの供給が可能となっている。
  また、タンクシェル用の接着性樹脂には、燃料のバリア樹脂であるEVOHとの高い接着性が求められる。接着性樹脂・アドテックス™は、ベース樹脂となるポリエチレンの主鎖に無水マレイン酸をグラフト変性によって導入した図6に示すような分子構造を有し、グラフト変性された無水マレイン酸部位がEVOHの官能基と結合して接着性能を発現する。
  アドテックス™ FT71A(以下FT71A)は、燃料系に対する最適な設計とコンパウンド技術により、高い接着性能を有しており、燃料浸漬後においても高い接着性を保持している(図7)。
また、多層ブロー成形のPFTの場合、成形時に金型の上下にバリが発生するため、そのバリをリサイクル使用できるように再生材層が独立して設けられている。再生材層には主材であるHDPEの他、バリア樹脂であるEVOHが含まれており、FT71Aは、再生層中でHDPEとEVOHの相溶化剤としての機能を持ち、再生層中のEVOHを微細に分散させ、再生層材料の物性を向上させる重要な役割を担っている(図8および表2)。


2.2 溶着部品用材料

  射出成形されるバルブやインレットロアなどの部品は、PFT本体に溶着される。これらの溶着部品には、タンクシェルと同様の性能が求められる。従来は、HDPE単体の射出成形による溶着部品が主であったが、近年の世界的な燃料透過規制強化への対応のため、耐燃料透過性に優れたポリアミドなどの樹脂とポリエチレン系接着性樹脂との2色成形による溶着部品が増えている。

2.3 樹脂インレットパイプ用材料

  燃料系周辺部品の樹脂化も進んできているが、特に給油口から燃料タンクに燃料を輸送するインレットパイプ(図2参照)の樹脂化は、金属製との比較で40~50%の軽量化が可能と、その効果が大きいために、鋭意開発が行われている。この樹脂インレットパイプ用の材料にも、HDPEおよび接着性樹脂が使用されている。樹脂製インレットパイプを成形する工法として、3次元ブロー法やコルゲート押出成形法がある。ブロー成形ではドローダウンの影響を回避するため溶融粘度の高い樹脂が求められるが、押出成形では溶融粘度の低い樹脂が求められることから、新たに燃料系用途に適合する低粘度の押出グレードを開発・展開し、JPE材料の搭載実績が増加している。


2.4 尿素水タンク用材料

  軽油を燃料とするディーゼル車においては、ディーゼルエンジン排出ガス中の窒素酸化物(以下NOx)を浄化するため、尿素SCRシステム(Selective Catalytic Reduction)(図10)の普及が始まっている(詳細は前報第34号参照)。
  尿素水の加水分解によりアンモニアを生成させ、得られたアンモニアによってNOxを水と窒素に還元している。尿素水には金属腐食性があり通常の鉄製タンクは使用できず、高価なステンレス素材の使用が必要となるため、軽量で安価なHDPEの使用が尿素水用タンク用途で広がっている。HDPEは尿素水に対しての耐久性に優れており、図11にその一例としてHB111Rの耐尿素水性を示す。HDPEは長期にわたる高温での尿素水浸漬テストでも、劣化を示さない事がわかる。

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