自動車燃料系部品へのポリエチレン系材料の展開 概要【Automotive Materials 第35号特集1】
自動車関連事業推進センター
1.はじめに
自動車用樹脂製燃料タンク(以下PFT)は、金属タンクと比較して、耐久性・形状自由度・軽量化・工程合理化等のメリットがあることから、1960年代末より欧州で採用が始まり、欧州では既に燃料タンクの90%以上がPFT化されている。北米でも1990年代後半より急速に採用の拡大が進み、今では80%以上の乗用車にPFTが搭載されている。一方、日本では欧米に比べ採用が遅れていたが、2000年以降急速に採用・搭載が進み、特に近年は軽自動車にも搭載車種が増加していることから、トータルでの樹脂製の比率は50%以上に達している。今後も欧米並みの比率まで樹脂化率の向上が見込まれている。日本市場において、日本ポリエチレン(株)(以下JPE)のPFT向け高密度ポリエチレン(以下HDPE)の国内シェアは9割強を占めている。本稿では燃料タンク用、および同様の理由で急速に樹脂化が進んできたタンク以外の燃料系システム周辺部品用ポリエチレン材料を併せて紹介する。
4.研究開発体制
JPEの研究開発部(神奈川県川崎市)では、PFTの生産実機相当の大型多層ブロー成形機・(株)日本製鋼所製NB150(図18)を保有しており、社内の材料開発に活用するとともに、顧客からの依頼による成形試作にも対応している。また、各種の物性評価機器、分析機器、燃料浸漬設備等を有しており、最終製品の開発および工法開発の先行開発段階から協力できる研究開発体制を整え、必要とされる材料の開発・提案を実施することが可能となっている。開発スキームを図19に記す。
5.グローバル展開
自動車生産のグローバル化進展に伴い、日本で生産している材料と同等品質材のグローバル供給の要請が強まっている。JPEでは、北米INEOS社へPFT用HDPEの製造技術をライセンス供与することで、北米において日本と同等の材料の供給を開始している。接着性樹脂についても、同じ三菱化学グループ企業であるMitsubishi Chemical Performance Polymers, Inc.において、米国や欧州でのライセンス生産を開始している。図20にグローバル供給体制を示す。
6.未来に向けてのトピックス CNG・水素向けタンク技術
JPEでは、将来のエネルギーとして期待されるCNG(天然ガス車)/水素(燃料電池車)向け高圧タンクへのポリエチレン材料の適用検討を進めている。既存の多層樹脂製タンク向けのブロー成形技術を活用して、高圧タンクライナー向けにHDPE/EVOH多層樹脂製タンクの適用を検討しており、試作品を図21に示す。メリットとしては軽量化およびコスト低減、課題としては金属口金部とライナーとの接合強度確保が挙げられる。課題の金属口金と樹脂製ライナーとの接合に関しては、接着性樹脂アドテックス™を使用した口金金属の粉体塗装技術により、ライナー樹脂のポリエチレンと金属口金を強固に接着させることに成功し、口金とライナー界面のマイクロリークを防止することが可能となった。図22に粉体塗装プロセス、図23に金属口金の塗装前後写真を示す。引き続きJPEでは、これまでの材料開発で培った技術を活用して、高圧タンク向け材料の開発に取り組んでゆく。
7.おわりに
JPEは、自動車向け燃料系システム部品用の材料開発で培った材料設計技術・成形技術・分析技術を活用し、今後とも多様な市場ニーズに迅速に応えてゆく。また、燃料系部品向けNo.1材料サプライヤーとして、顧客との信頼関係を深化させ、グローバル市場での存在感をさらに高めるべく、従前にも増して研究開発に注力してゆく。
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