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緒 言


病原細菌がヒトに感染し疾病を起こすための重要な第一歩はヒトの組織に付着することである1)。また、病原細菌に限らずほぼすべての細菌が何らかの固体表面に付着した状態で生息していると言われている2)。その個体は生物に限らず、自然界のあらゆる個体が対象となる。固体-液体界面に生息することによりそこに存在する栄養の摂取が容易となり、捕食生物からの防御が可能になるなどのメリットがあるためと考えられている。その付着状態から増殖をし、コロニーさらに細菌とその菌体外産物の塊で強固に固相表面に付着したバイオフィルムを形成する3,4)

環境中の細菌は何らかの固体表面に付着しているが、中にはヒト病原性を有するものもあり、それが感染源となりヒトに感染症を引き起こす可能性がある。例えば、調理場の壁、水回り、浴室の壁、浴槽あるいはシャワーヘッド、自動車の内部等多くの表面が考えられる5)~8)。また、食品製造現場の壁などの表面への細菌付着は多くのヒトの食中毒を起こす危険性をはらんでいる9,10)。この環境を感染源とした感染の予防のためには、それらの表面を消毒することが必要であるが、細菌が付着しにくい素材の使用も一つの方法と考えられる。細菌が付着しにくい表面性状は撥菌性(Bacteria-repellent)と呼ばれ、様々な試みがなされている。

我々はプラスチック表面を2-methacryloyl oxyethyl phosphorylcholine(MPC)ポリマーでコートすることにより細菌付着を顕著に抑制することを報告してきた11)~13)。細菌、真菌等のプラスチック表面への付着には疎水相互作用が大きく関わっており14)付着阻害には表面の超撥水性および超親水性が有効であると考えられる。MPCポリマーコーティングにより表面の超親水性が得られることから、これが付着阻害のメカニズムであると考察できる。

さらに我々は、樹脂表面特性の変化にて撥菌性を示すプラスチックが得られないかを探ってきた中で、イソソルバイドポリカーボネートの一部が撥菌性を示すことを見出した。イソソルバイドポリカーボネートはイソソルバイドと脂環式ジオールの共重合体である。イソソルバイドはデンプンや糖などの植物原料から誘導されるユニークな2級の複素環式ジオールである。イソソルバイドは分子骨格に芳香族構造を持たないが、剛直な縮合環構造を有するため、誘導される樹脂に高い耐熱性と剛性を与えることができる。しかし、イソソルバイドのホモ重合体である樹脂は脆く成形し難い材料であるため、通常は他のジオール成分の共重合による改質が行われている。

イソソルバイドのモル分率が上昇すると水滴接触角が低下し、表面がより親水性となることが認められた。またこの現象は細菌の付着時の洗浄性に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで、イソソルバイドポリカーボネートの撥菌性に与えるイソソルバイドモル分率の影響についての検討を行った。


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出典

高分子論文集 74 巻 (2017) 6号 p. 631-634
出版元; 公益社団法人 高分子学会