メタブレン™は、世界有数のメタクリル樹脂メーカーであるMCCが多様なモノマーと高度な重合技術を活かして独自の技術で開発したプラスチック用添加剤(図2)である。

  メタブレン™には付与する機能や対象プラスチックにより様々なタイプ・グレードがラインナップされ(図3)、現時点で10タイプほどが上市されている。また、添加効果が期待できる対象プラスチックとしては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリオレフィン(PO)系樹脂、エンジニアリングプラスチックスやエポキシ樹脂などが挙げられるが、その他にも様々なプラスチックを対象にできる。

   代表的タイプの主な特徴を以下に述べる。

  メタブレン™S、W、Cタイプは、衝撃強度改質剤(IM)であり(図4)、PVCやABS樹脂、エンジニアリングプラスチックス(以下、エンプラ)などに添加することで衝撃強度を向上できる。シリコーン系、ブタジエン系、アクリル系などの素材を展開しており、粒子径や構造を制御することで高い強靭性を付与できる。中でもシリコーン系はMCC独自の優れた性能を有する改質剤である。

  メタブレン™Aタイプは、加工助剤としてフィラー分散性向上に加え、燃焼時のドリップ防止効果が期待できる(図4)。本機能発現のメカニズムは次項で述べる。

  また、メタブレン™Pタイプは、PVCのゲル化促進機能の他、PVC、ABSやPO系樹脂、エンプラに対して溶融弾性を付与できる高分子量アクリル系樹脂である。添加により、カレンダー成形、射出成形、真空成形、発泡成形、異型押出成形などの成形加工時に発生する様々な不具合を解消し、生産性を改善できる(図5)。

   メタブレン™Lタイプは、アクリル系高分子量外部滑剤である。従来のモンタンワックス、ポリエチレンワックスに比べ、優れた持続滑性を持ち、高分子量のため、プレートアウトやブリード発生が少ないと考えられている(図6)。

  メタブレン™Aタイプ(以下、Aタイプ)は、アクリル樹脂を複合したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEはフッ素原子を表面に配した構造を持ち、剛直性の高い分子構造を有する。そのため凝集力が小さく、分子が折り畳まれた非常に結晶化度の高い結晶性高分子である。また、剪断力により容易にフィブリル化し、繊維状のネットワーク構造をとることができる(図7)。このフィブリルを効率よく発生、分散させることが溶融樹脂の溶融張力向上に重要となる。さらに、フィブリルのネットワーク構造により、難燃化配合樹脂のドリップ防止剤としても機能することが確認できている。

  Aタイプは熱可塑性樹脂用の改質剤であり、対象樹脂が本来持っている物性を損なわず、かつ溶融粘度の増大をできるだけ抑えて、真空成形・発泡成形・ブロー成形・異形押出等の加工で要求される溶融張力を、少量添加で大きく向上させ、成形外観の良好な製品を得ることができる。また、アクリル樹脂と複合・アクリル変性させることにより、一般のPTFEに比べ分散性・取り扱い性が格段に向上している。

  対象樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等のPO系樹脂をはじめ、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABSなどの汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル等のエンプラなど様々な熱可塑性樹脂に対して添加効果が期待できる。

PP押出発泡事例

  押出発泡では発泡セルを微細、均一化するために樹脂の溶融張力向上は必須条件であり、PPの場合には特にその性能が求められる。Aタイプを3部(phr)添加した系では図8に示すように伸長粘度測定において「ひずみ硬化性」が発現しており、実際の押出発泡では微細で均一な発泡セル(図9)を形成し、発泡倍率を改良(低比重化)することが確認できている。

PP異形押出事例

  PPの中空異形押出では、通常溶融張力が不十分なため、サイジングダイまでに溶融樹脂が垂れ下がり、表面外観が不良になる。ところがAタイプの添加により成形性を改良できる(図10)。

  また、高充填系配合や軟質系配合においても、成形外観の改良やストランドの引き取り性改善に添加効果が確認できている。図11に示すのはPPへの木粉配合事例である。

難燃化配合への適用事例

  Aタイプは、燃焼時のドリップ防止効果を付与できるだけでなく、リン酸塩系難燃剤との組み合わせにより消炎作用についても向上できる。PP/リン酸塩系難燃剤に対してAタイプを配合した事例では、Aタイプの添加が無い場合(図12左図)には着火した際に溶けたPPが燃焼しながら滴り落ちていくのに対し、添加した場合(図12右図)には着火性が抑制され、一度着火しても炎が消失した。これにより高いレベルの難燃性の実現や配合のコストダウン(難燃化剤低減)等が期待できる。

  メタブレン™Sタイプ(以下、Sタイプ)は、コア層のシリコーン/アクリル複合ゴムを、各種ビニル系ポリマーで被覆(シェル層)した構造のコア/シェル型改質剤の総称である(図13)。

  シリコーンの素材としての特徴には、低ガラス転移点温度(Tg)、熱・化学的安定性、低分子間凝集力などが挙げられ、そのシリコーンをコア層に用いたSタイプは、高温成形性(大型、薄肉、高サイクル)、耐久性、耐塗装薬品性、難燃性等の長所を有し、MCCはシェル層組成、粒子径などを変えた多様なラインナップを展開している(表1)。また、Sタイプは、ブタジエン系と同様に低温領域から耐衝撃強度改質効果を発揮する(図14)。

Sタイプの優れた耐久性

  更にSタイプは、ブタジエン系の欠点である耐熱安定性、耐薬品性の点でも優れている。例えば、高温に長時間晒された後も常温/低温での衝撃強度維持性に優れる(図15)他、化学的に安定な組成で構成されているため耐黄変性や、様々な化学薬品(植物油、アルカリ洗浄剤等)との接触後の強度維持性にも優れている(図16、図17)。

  これらの特徴はマテリアルリサイクルプロセスへの適応性を有することも示している。例えば、2軸押出機で3回コンパウンドプロセスを経た後も低温でのシャルピー衝撃強度が維持されることが図18のように確認できている。

高シリコーン含有Sタイプ「SX-005」

  SX-005は、高シリコーン含量が特徴の衝撃強度改質剤であり、シリコーン/アクリル複合ゴムにグラフト重合を行ったコア/シェル型のグラフトゴムであるため、シリコーンオイルのように成形品表面へ移行することなく、シリコーンの特徴である摺動性や難燃性を付与することができる添加剤である。

  加えて、難燃配合PCに対して一般的なSタイプやブタジエン系を添加配合した系では、燃焼時間が長くなり難燃性能が悪化するが、SX-005配合系ではBlankを超えるV-1相当となる(図19)。SX-005は、難燃配合PCの難燃特性を低下させることなく、衝撃強度向上等の特性を付与できる改質剤と言える。

  また、表2や図20のように成形品表面の動摩擦係数を低減し、成形品間のきしみや摩耗(傷付き)の低減にも効果を発揮することが確認できている。

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