心不全とは、種々の疾患により、心臓の機能が低下して全身組織の需要を満たすだけの血液が送れなくなった状態をいいます。最近実施された疫学的な調査によれば、欧米における心不全患者数は現在約1700万人と言われており、今後の人口構成の老齢化に伴い、さらに増大することが予想されています。同疾患に対する現在の治療薬としては、利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、

遮断薬、強心薬があります。これらの治療薬が患者の症状や重症度に応じて単独または複数の薬剤の組み合わせで投与されていますが、これら既存の治療薬によっても心不全患者の生命予後およびQOLが十分に改善されたとは言い難いのが現状です。
また、これまで心臓の収縮機能が低下する病態が心不全と考えられていましたが、最近の研究から、収縮機能は正常でありながら拡張機能に異常が見られる、「拡張障害型心不全」という病態が明らかになり、これが全心不全患者の30-40%に認められることが分かってきました。しかし、現段階では「拡張障害型心不全」の心機能および症状を改善する有効な薬剤がないため、新たな薬剤の開発が望まれています。
なお、心筋の収縮と弛緩は、心筋細胞質内(筋小胞体外)のカルシウムイオン濃度で調節されます。心筋は、筋小胞体に貯蔵されているカルシウムイオンが細胞質内に放出されることで収縮し、上昇した細胞質内カルシウムイオンが筋小胞体に再吸収されることで弛緩します。
心筋梗塞とは、心臓の冠動脈の閉塞によって心筋壊死をもたらす疾患です。欧米における新規の急性心筋梗塞は、毎年約280万人に認められます。同疾患に対する現在の治療法としては、冠血管狭窄・閉塞を再開通させ血流を確保する、冠動脈インターベンションおよび血栓溶解療法等の再灌流療法が主流になっています。しかしながら、同療法後の急激な血液の流入により、ナトリウム−カルシウム交換系を介して大量のカルシウムイオンが心筋細胞内に流入し、心筋細胞の壊死が引き起こされること(再灌流障害)が指摘されています。