三菱化学株式会社(本社:東京都千代田区、社長:石塚 博昭、以下「MCC」)と米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(米カリフォルニア州、以下「UCSB」)は、2001年にUCSB内に三菱化学先端材料研究センター(以下「MC-CAM」)を設置し、先端機能材料分野における画期的な新材料、デバイス、加工・解析技術等の研究開発を行ってきました。
MC-CAMは、このたび、高分子材料を用いた有機薄膜トランジスタの研究開発において世界最高レベルの電荷移動度*を達成し、その成果をAdvanced Materials誌に発表しましたのでお知らせします(http://engineering.ucsb.edu/news/753)。
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下「TFT」)は、主に液晶ディスプレイなどの画素スイッチとして用いられ、現在はシリコン系半導体材料(多結晶シリコンTFT及びアモルファスシリコンTFT)が広く使われています。しかし、多結晶シリコンTFTは一般に電荷移動度が高いものの、多結晶であるために均一性に乏しく、製造設備の制約により大面積化が困難です。一方、アモルファスシリコンTFTは、プロセス温度が約400℃と多結晶シリコンTFTよりも低く、均一性が高いため大面積化が可能ですが、電荷移動度が低く、有機ELをはじめとする次世代ディスプレイ(要求される電荷移動度の目安は10 cm2/Vs)に用いるには不十分です。また、多結晶TFT、アモルファスTFTのいずれも400〜600℃での熱処理が必要なため、基板にポリマーを使用するフレキシブルデバイスへの適用が困難です。
一方、有機TFTは、有機物の特長としてシリコン系TFTよりも柔らかく塗布による低温での製造プロセスが可能であり、そのため、大面積でフレキシブルなデバイスがより安価に作製可能になると期待されていますが、実用化にあたっては電荷移動度が課題とされていました。
このたび、MC-CAMでは、Heeger教授によるデバイス作製技術、Bazan教授による高分子材料設計と合成技術およびNguyen教授によるデバイス解析技術を組み合わせ、チームとして改良を重ねることにより、23.7 cm2/Vs という世界最高レベルの電荷移動度を達成し、有機TFTの実用化に向けて大きな一歩を踏み出しました。
MCCは、MC-CAMで開発された上記技術の実用化に向け、当社傘下の株式会社三菱化学科学技術研究センター(本社:横浜市青葉区、社長:森 知行)においてMC-CAMと連携しながら研究開発を進めていきます。
*電荷移動度:半導体中を荷電粒子が移動するときの移動のしやすさを示す。画素の
スイッチング速度に大きく影響し、この数値が高いと明るく高精細なディスプレイの実現が可能
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