持続可能な成長をめざすサーキュラーエコノミー

三菱ケミカル株式会社

目標 13

関連の深いSDGs
目標 13.気候変動の影響を軽減するために具体的対策の取り進め

サーキュラーエコノミーの推進により新たなビジネスソリューションを提供

世界は、気候変動や人口増大に伴う諸問題など、多くの解決すべき課題を抱えています。化学の技術はさまざまな社会課題を解決できる大きな可能性を有しており、三菱ケミカルは、社会の一員として、また総合化学メーカーとして、これらの課題に正面から向き合ってきました。
特に近年は、各国の環境規制強化などを受け、サステナブルな製品に対するお客様からのご要望が日に日に高まっています。三菱ケミカルは、従来の「採って、作って、使って、廃棄する」という一方通行のリニアエコノミーから、リサイクルを含む資源の有効活用や再生可能原料の使用などをはじめとするサーキュラーエコノミー(循環型経済、以下CE)への移行を推進することにより、社会からの要請に応えつつ持続的な成長をめざしていきます。
具体的な対応として、CEを推進する専門部署の設置や、廃プラスチック、気候変動問題への取り組みなどの事例をご紹介します。

リニア型経済からサーキュラー型経済へ

グローバルな視点でバリューチェーンのパートナーとともにソリューションを提案

サステナビリティに関する社会課題への取り組みを強化するために、2020年4月にサーキュラーエコノミー推進部を設置しました(2021年4月組織改編によりサーキュラーエコノミー推進本部、以下CE推進本部)。これまでも各事業でサステナビリティに関わる課題解決に取り組んできましたが、CE推進本部では、グローバルな視点・規模で、従来の事業部門の枠を超えて、さらにはバリューチェーンのパートナーとともに、CEに関連するソリューションの提案と事業化を推進しています。また、アカデミア、スタートアップ等との連携も積極的に進めていきます。
CE推進本部の活動としては、三菱ケミカル全体のCEに関する課題把握と戦略の策定、ソリューションの事業化推進、温室効果ガス(GHG)や排水などの事業活動から生じる環境負荷の低減に向けたサステナビリティマネジメントなど、CEに関する全社的な取りまとめを行います。加えて、サステナビリティに関する各国の規制動向などの情報を収集・発信し、また各部署とお客様とのCEに関する対話を支援していきます。

提携を推進しプラスチックのリサイクル体制を構築

リニアエコノミーからCEへ転換するには、リサイクルの工程が極めて重要です。プラスチックのリサイクルは、回収した使用済みのプラスチックを、(1)融かして成形し直して再利用するマテリアルリサイクルと、(2)分解してモノマーや中間原料に戻し再び重合してプラスチックを作る、あるいは油やガスにまで分解してから化学品の原料とするケミカルリサイクルの2通りに大別されます。三菱ケミカルは、その両方に対応できるようさまざまなパートナーと技術開発を含めた提携を推進し、従来は単に焼却・埋め立てられてきた廃プラスチックを資源・原料としてリサイクルできる体制の構築を強化していきます。ここでは、バリューチェーンのパートナーとともに取り組んでいるケミカルリサイクルの事例をご紹介します。

回収プラスチックの油化

三菱ケミカルとENEOS株式会社は、2019年に共同設立した鹿島コンプレックス有限責任事業組合において、使用済みプラスチックを石油精製・石油化学の原料として再生利用するケミカルリサイクルの事業化に取り組んでいます。
具体的には三菱ケミカル茨城事業所に国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を有するプラスチックの油化設備を建設し、2023年度に営業運転を開始することをめざしています。油化処理には、英国のMura Technology Limitedの超臨界水技術を導入します。製造されるリサイクル生成油は、ENEOSおよび三菱ケミカルの既存設備である石油精製装置およびナフサクラッカーにおいて原料として使用され、石油製品や化学品、各種プラスチックへと再製品化されることで、高効率なケミカルリサイクルの循環が実現します。また、原料となる廃プラスチックの調達にあたっては、2020年8月に資本業務提携を行ったリファインバース株式会社と連携していきます。そして、プラスチックケミカルリサイクル設備の実装に向けて、マスバランス方式*1によるケミカルリサイクル品認証の取得および社会へのマスバランス方式の浸透をめざします。

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  • *1マスバランス(物質収支)方式:石油由来原料と廃プラスチック由来のリサイクル原料を混合して製品が製造される際に、第三者認証を取得することで、使用したリサイクル原料の割合を任意の製品へ割当てる流通管理方式。
    三菱ケミカルは、ISCC(International Sustainability and Carbon Certification)の最新の 規定に則り、ISCC PLUS認証の要求事項に準拠することを約束し、宣言します。

アクリル樹脂のケミカルリサイクル

三菱ケミカルおよび三菱ケミカルメタクリレーツ株式会社は、かねてよりPMMA(ポリメチルメタクリレート、以下アクリル樹脂)のリサイクルに向けた検討を行ってきました。欧州では既存の技術を導入したリサイクルの検討を進めており、日本国内においては、アクリル樹脂のリサイクル技術検討のパートナーであるマイクロ波化学株式会社と協力し、2021年6月に同社の大阪事業所内に新たに実証設備を建設しました。日欧それぞれのアプローチで2024年の稼働を視野に、アクリル樹脂のリサイクルプラントの建設に向けた検討を本格化します。
アクリル樹脂は優れた透明性・耐光性をもつプラスチック製品で、自動車のランプカバー、看板、水族館の水槽、塗料、建材などに幅広く用いられています。また、昨今では、飛沫感染防止用のアクリル樹脂板の需要が増加しています。廃アクリル樹脂は、当社の製造工場から出る廃材に限らず、将来的には広く市場から回収することを視野に入れています。その一環として、本田技研工業株式会社とともに、廃車からのテールランプなどのアクリル樹脂の回収、ケミカルリサイクルおよび再利用について、リサイクルシステムの実証試験を共同で実施していきます。

人工光合成プロジェクトでGHG低減に貢献

GHGの低減に向けて、工場や発電所などから排出される二酸化炭素を化学品の原料として利用する人工光合成が注目されています。三菱ケミカルは、2012年よりNEDO*2の人工光合成プロジェクトにARPChem*3の一員として参画し、次の3段階のプロセスすべての開発に携わっています。
(1)光触媒によって、水を水素と酸素に分解し、(2)分離膜によって、水素と酸素の混合ガスから水素を安全に分離し、(3)最後に、その水素と工場排ガス等から回収した二酸化炭素を原料として、化学品を製造する基盤技術を開発しています。

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人工光合成プロジェクトでは、光触媒の太陽光エネルギー変換効率の最終目標10%に対し2019年度にはラボスケール(研究段階)で7%を達成しており、2020年度から水分解システムの屋外実証試験にも着手しています。

  • *2NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization):国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。
  • *3ARPChem(Japan Technological Research Association of Artificial Photosynthetic Chemical Process):人工光合成化学プロセス技術研究組合。参画機関は、株式会社INPEX、TOTO株式会社、一般財団法人ファインセラミックスセンター、富士フイルム株式会社、三井化学株式会社、三菱ケミカル。

化学産業としての役割を果たすための長期ビジョンを策定

2050年の社会の姿を見据えて、化学産業がどのようにサステナビリティに取り組むべきか、長期ビジョン策定の一助とするため、三菱ケミカルは東京大学グローバル・コモンズ・センター(CGC)との産学連携を実施しています。
CGCは、地球環境システムの持続可能性を確保するため、社会・経済システムの根本的転換の道筋をモデルやインデックスによって科学的に示し、企業をはじめさまざまなステークホルダーと協働しながら、その実現を国際的な連携により促進することを目標としています。
三菱ケミカルとCGCは、2050年とそこへ至るまでの2030年、2040年における社会ニーズ、特にモノ、サービス、社会システムを明らかにし、その中でグローバル・コモンズ*4を守るための化学産業の役割に関する共同研究を2021年4月1日より開始しました。
具体的には、プラネタリー・バウンダリーズ*5の範囲内で活動するサステナブルな社会・経済の実現をめざして、化学産業自らの環境負荷低減に加えて、他の産業や消費者のために化学産業が果たすべき役割、解決すべき課題を検討し、ビジョンを描きます。特に生産・消費、エネルギー、食料、都市などの主要経済システムの転換に対して化学産業が貢献できることを研究します。本研究の特長は、専門性をもつ外部の知も結集して取り組むことにより、欧州をはじめとする海外での最新の取り組みも参考にしながら、主要化学品の原料からリサイクル・廃棄までの定量的なモデルを構築・活用して、日本の化学産業の取るべき道筋を明らかにするところにあります。研究成果は、サステナブルな社会・経済の実現加速のために社会へ広く共有、発信していきます。

  • *4グローバル・コモンズ(Global Commons):人類の持続的発展の共通基盤である地球環境システム。
  • *5プラネタリー・バウンダリーズ(Planetary Boundaries):地球環境システムを安定化させている9つのプロセス(気候変動、生物多様性、窒素・リン循環など)について、人類が持続的に発展していくために超えてはならない限界値を定義した概念。これを超えると大規模で不可逆的な環境変化をもたらすリスクが大きくなる。気候変動が危険領域にあるほか、生物多様性と窒素・リン循環は限界値を超えたとされている。

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